その視線の先にはイーニアス・マーティンがいた。


 歴とした英国の伯爵家の長男。ブロンドの髪に、蒼の瞳、紳士的な態度にその仕草、おまけに甘い顔の男。フェスティバルに合わせてイーニアスには伯爵としての爵位が与えられると聞いている。


 マーティン家は古くから紫音家と所縁があり、ゲストとして贅沢なもてなしてくれているのだ。


 マーティン家には、紫音家以外にも様々な来賓を受け入れていて各国の金持ちが集まっている。




「はぁ……カッコいい。本当にいるのね、王子様って」


 ミルクティーを小さく口に含み、完全に目線をイーニアスに奪われたお嬢様。



 隣に座る紳士と楽しそうに会話するイーニアスだけを見つめていた。清楚な顔立ちに、中性的かつ均等がとれいる。背も高く、時折見せる優しい笑顔にくぎ付けだ。


 見ているだけで吐き気がしてくる。



「あっ……」


 ジーッと見つめすぎのお嬢様の存在に気がついたイーニアス。彼は、茉莉果様に小さく手を振った。


「どうしよう! 柏原、彼が手を振ってきたわ!」