黙る小娘。


 よし、大人しくなった。


 幼くあどけない顔が無表情になり、下唇がふるっと震えた。


 この程度で泣かれてもつまらないなと、上から見下す。


 まあ、いい。面倒だから、車に押し込めてから口止めすればいい。



 だけど────


「ふふっ……あははは!」


 大きな笑い声。令嬢に似つかわしくない程、大口を開けてケラケラと笑い転げる彼女に、言葉を失ったのは俺のほうだ。


「あはは! あー! あなた、面白いわね! 目に入れたら、痛いに決まってるじゃない……あはははっ」


 例えが可笑しかったのか? まだ日本語が不馴れで、変な例えをしてしまったのか……いや、間違えはないはずだ。一度覚えたことは忘れない。


 少女は無邪気に笑い、潤んだ瞳を指で拭った。

 こぼれ落ちそうな程、大きな瞳。陶器のように白い肌は、ほんのりと薔薇色に色づいた。


「面白い冗談ね」

「申し訳ございません。まだ日本語は勉強中です」



 冗談なんて言ったつもりはない。

 コイツ、頭のネジが元々決壊して生まれてきてしまったのだろう。