そして現在、お嬢様の部屋の清掃中だ。


 あの可愛らしい変人お嬢様は学校に行っているので、屋敷にはこの俺が一人。

 お嬢様は、変人のくせに美意識が高く、清掃には口煩い。部屋に埃が一つでも落ちていた日には、俺のことを散々蔑む。

 機嫌の悪くなったお嬢様は、そのことを餌に散々わがまま放題だ。



……なんで俺はあんなのを相手に毎日毎日こんな必死になっているんだろう?


 もう十分、日本で一人でやっていけるだけの知識と貯えはある。

 俺が執事をやめると言えば、きっと新しい使用人が雇われるだろう。



 辞めてしまえば、こんな毎日から解放される。

 近くて遠いあの変人小娘に、心をかき乱されることもなくなるというのに


……どうして、俺は『ずっと傍にいる』なんてことを言ってしまったんだろう。