奪えてしまえそうなくらい、すぐ近くに彼女の唇がある。


 肩に腕を回して、抱き寄せて、そっと唇を奪ってしまえば……どんな反応をみせるかな?



「柏原……私服だと……」


「いかがなさいましたか?」


 お嬢様は小さく首を振った。目がトロンと微睡む。


「眠くなってしまわれたのですか? それでしたら、屋敷に帰りましょう。今、車を……」

 
 彼女の頭が肩にあずけられて、俺は言葉を失う。


「周りは、恋人ばかりだわ……こんなところ、いつも誰と来てるのよ……」

「お嬢様……」



「柏原は、私の所有物よ。覚えておいて!」



 アルコールのない甘いカクテルと、輝く夜景、隣の彼女の手が俺の手に触れる。


「今夜の柏原、かっこよすぎて訳わかんないわよ……」



第15話につづく