そんな悲しそうなお嬢様の顔は、先にも後にも一度も見たことがないからだ……




「はぁ、雨は嫌いだわ」


 柔らかい髪を、ブラッシングしてやると彼女は頬杖をついてため息を落す
。癖のある髪を丁寧にとかし、軽くワックスをつけて馴染ませる。

 栗色の髪は艶やかで、とても美しいウェーブを描く。



「そうですね」


「柏原も嫌いなの?」




「ええ、そうかもしれません」


 本音は、雨で鬱々とするお嬢様を見るのが嫌だ。



「でも、柏原って晴れより雨が似合うわ」


「それはどういう意味でしょうか?」


 優しく微笑む。

 が……あまり良い解答は期待できない気がする。



「え、だって柏原に似合わない単語に『光』とか『爽やか』とか『清々しい』とか入ってるわ。だから晴れより雨が似合うわよ」