「冷たくって気持ちいい…… お父様とお母様に連絡した?」 「ええ、お二人とも大層ご心配されていたようです」 「でも、帰ってきてくれないでしょう……」 「コンサートがあるようですし、帰国なさる頃には貴女も回復なさってますよ。ただの風邪でしょう。 私が誠心誠意看病いたしますので、だから……」 「もういいわ、柏原。ありがと」 執事としての仕事は、主人の看病をしてやる事だけだ。 それなのに俺は、お嬢様を抱き締めその職務以上のことをしてやりたいと思ってしまう。