つい本能で雇い主だということを忘れて、右腕を机に強く叩きつけてしまった。


「なっ、なにっ!?」



 雇い主はショックを隠しきれない表情で、右腕を見つめた。



 しまった……





「申し訳ございません。今のは取り消していただいてもかまいません」


 咄嗟に謝罪の姿勢。

 人の考えをよく読んで行動しろと、父に教えこまれていたのに、軽率だったか。


 この男が身元を保証してくれないのなら、身寄りのない俺は天涯孤独。ビザが取れなければ、この国から出る事もできないだろう。



「ふっ……はははは!」


 無意味とも思える、雇い主の高笑いに思わず顔を上げた。


「気にいった! 腕相撲の強い柏原くん! やっぱり、君に茉莉果は任せるよ! 今日から、君に腕相撲で勝った男が茉莉果の花婿になる」


 そっ……そうきたか。 正直、迷惑な話だな。


 まあいい、縛りつけて弄んでやったあとに適当な男にくれてやる。



「執事として頼んだよ。明日には日本に発ってもらうがいいかな?」


「ええ、仰せの通りにいたしましょう」


 やっぱり、余裕だったか……



第2話へ つづく