何度かその名前を聞いている。この小娘と友達になれるって事は、かなりの変人だと思っていたが……変人に危険物を持たせるな!


「さようでございましたか。バターを溶かすのに、使いたいのでお預かりしてもよろしいですか?」


「いいわよ! これが、最後の一個だから大切につかってね?」


 無邪気に笑う俺のお嬢様。

 出来たら良い治療法があるといいのだが、先天的な疾患だろうな。


 調理はやっぱり一人がいい。



───その後


 火薬のスパイスが効いた底のないレアチーズは、多目のレモン果汁で風味を誤魔化した。


「美味しい! 自分で作ると美味しいわ!」

 
 お嬢様には、ご満足いただけたようだ。



「柏原にも食べさせてあげる。はい、あーんして」


「けっこうです」


「恥ずかしがらないの! あーん」



「けっこうです!」



第4話へつづく