瑞々しいレモンを手に、キッチンに戻る。 すると、鼻歌混じりにマッチ箱を手にとるお嬢様がまず目に飛び込んできて背筋が氷ついた。 「おっ……お嬢様!」 「柏原。私、一瞬でビスケットを砕く技を思いついたの!」 シュッとマッチに火をつけた…… 「や、やめろっ!」 マッチはガラスのボウルに吸い込まれるように、投げ入れられた 。 バチバチバチバチッ! 「危っ! お嬢様!」 彼女の細い腕を掴み、抱き寄せて床に伏せる。 傷つけないように、彼女を守ろうと大切に抱きしめていた。