目の前に、今期パリのファッションショーで発表されたばかりの女性用の"水着"を突き出された。



 彼女は、早く決めろ、と俺を睨み付けてきた。



「どちらも良くお似合いですよ……」



 正直、こういうのは大苦手だ。

 金持ちの彼女のお眼鏡にかなうよう、店長は店中の水着をかき集めてきたんだろうが(それも数着購入するのを見越してだ)俺には全てが同じものに見える。

 女の買い物に付き合うこと程、時間の無駄使いはないだろう。大体、彼女は毎回毎回こうして俺の意見をきいてくるが、俺がどちらを選んでも最終的にはご自分で選択をする。



「役にたたないわね!」


 申し訳ございません。と、頭を下げた。


 でも、待てよ……とも思う。


 水着ということは、お嬢様はこれを着て人前に出るということだ。数日後にはタヒチ旅行を控えていらっしゃる。


 と、いうことは、この下着程度の切れ端で覆った体を他人に見せるということか?


「茉莉果様はどんなものも、とても上手く着こなせてしまいますわ。スタイルがよくて羨ましいです。どちらも、本当によくお似合いです!」


 愛想の良い商売上手な女性店員が俺を差し置いてアドバイスをはじめた。