「嫌よ……どこにも行かないで」 お嬢様の片方の靴がベッドカバーの上に脱げていた。 「一緒にいて欲しいのですか?」 「うん……」 褪めたような冷やかな視線を向ける。 本当は、今すぐにでも抱き締めてやりたい。 「……柏原と一緒に眠りたい。だめ?」 彼女はたちが悪い。 綺麗な顔の男にすぐに引き寄せられられるのも、その気がないくせに思わせぶりな態度をとることも……いつの間にかこんなに俺を引き寄せていたことも。 いつもいつも俺を惑わす。その全てが…………どうしてこんなに愛おしい?