道化師は笑う［ＢＬ注意］

「おい！滑稽な道化師さんよ。団長の機嫌をとっていい部屋に住めていいもんだな？」

道化師よりも体格のいい男が道化師を引き止めた。

「やだなぁ・・・俺はゴマすっているわけじゃありませんよ？ただ、母さんに喜んでもらえるように、いい演技をしているだけです。これから夜の公演でしょう？がんばってくださいね」

「っ・・・・」

道化師は公演中と変わらず、仮面のような貼り付けの笑みを崩さずに言った。
男たちはそれに・・・・もちろん言葉の内容にもだが・・・・イラついたのだろう。近くにあった木材で道化師のわき腹を横殴りにした。

「ぐっ・・・・」

鈍い音とともに、道化師がうめき声を上げてその場にひざを着いた。

「ホント、いい身分だよな？俺たちみたいに汚されずに、団長のお気に入り。今までは息子だろうと関係なかったのによ？顔がいいからって生意気だぜ？」

「顔は関係ないでしょう？公演中は顔を隠していますし」

男は顔がいいというが、言っている本人も、道化師と代わらずカッコいい顔をしている。
また、道化師が言っていることも事実なので、顔はあまり関係ないのだが、男は道化師がいまだに汚れていないことがイヤなのだろう。

「なぁ・・・俺らが相手してやるから、てめぇも汚れちまえ」

「！？」

男は道化師を引きずってめったに人の来ないテント裏に移動させた。

「何を言ってるんですか？」

道化師は一瞬顔を歪めるが、すぐに笑顔で男”たち”にきいた。

「本当はお前も望んでるんじゃないのか？」

道化師とは違う、ゆがんだ笑みが道化師を囲んでいた。