「ほんとに何もないなぁ。お前の田舎って」
運転席で笑いながら、裕也が言った。
「うるさいなー、そんなの前に言ったじゃん!」
私は少し拗ねたように唇を尖らせて言った。
裕也とは、大学で出会った。
図書館で過ごすのが好きな私は、図書館で特等席があった。
その特等席に座っていたのが裕也だった。
仕方ないから、違う席に行こうとした時、
イスが引かれる音と、声が同時に聞こえた。
「あのっ!」
「…?」
「すいません、いつもここの席ですよね、僕どけるので…」
確かこれが最初の出会いだったと思う。
それから、だんだんと話すようになって
不思議に趣味もあって、
仲良くなっていった。
そんな懐かしい事を考えていると、
車が止まった。
「着いたよ。」