伊坂商事株式会社~社内恋愛録~

「何よ、そのつまんない理由は」


いきなり不機嫌に口を尖らせた篠原班長。

俺はちょっとびっくりした。



「教えなーい」


挙句、イーッ、とされる始末。



「あんたは子供か」

「うるさい。馬鹿。変態」

「何なんですか、もう。ほんとわけわかんないんですけど」


風邪を引いたついでに、どこかおかしくなってしまったのか。

俺は思わず呆れてしまう。



「いいから教えてくださいよ。あんたのこと考えすぎて、こっちは夜も眠れないってのに。おかげで寝不足すぎてそろそろ限界ですよ」


もういい。

どうなったっていい。


こんな想いを抱え続けてたら、俺の方が病気になる。



「何でわかんないんですか。ほんと、これから嫌なんですよ、仕事しか見てない女は」

「は? それって悪口?」

「告白でしょうが」

「どこがよ」

「……『どこが』って言われても」


っていうか、動じてさえくれないってどうなんだよ。

篠原班長は肩をすくめ、



「知ってるわよ」

「……はい?」

「少なくともここ一年くらいは、ひしひしと感じてたわよ」


あぁ、そうですか。

なのに、わかってて無視してたわけですか。



「嫌な女だなぁ、もう」