あれから一週間。
前と同じに戻っただけなのに、なのに虚無感がひどかった。
何だか今ではもう、山辺さんと過ごした日々は、現実逃避がしたい私が見ていたただの夢だったのかもしれないとすら思えてきて。
「何度言ったらわかるんだ、北澤! またこんな程度のことを間違えて! 茶髪にしているから頭まで馬鹿になってしまうんじゃないのか!」
パワハラに加えてモラハラもひどくなってきた、阿部課長。
もう耐えることにも疲れ果てた。
むしろ会社を辞めた方が自分のためだとさえ思えてくる。
「すいませんでした」
私は棒読みで言った。
本気で再就職先を探そう。
それがいいよ、うん。
「やり直します」
「当然だ! お前みたいなやつの所為で仕事が遅れるんだ! 今日中に終わらせろよ、今日中に!」
「はい。すいません」
また棒読みで返したら、
「何だ? その目は。俺に意見でもあるのか? 文句でもあるのか?」
「いえ、別に」
「『別に』だと? ちゃらちゃらした身なりだから上司に向かってそういう口のきき方になるんじゃないのか?」
「そういうつもりはないんですけど」
「お前の評価を下げておく。覚悟しておけよ。真っ先にクビ候補だからな」
あぁ、そうですか。
もう勝手にしてくれという感じだった。
最近じゃあ、人事課のみんなまで、阿部課長を恐れて私を避ける始末なのだから、どのみちここに私の居場所はもうないのだし、だから余計、会社に未練もなくなった。


