次に目を開けた時には、彼の姿はなかった。
誰もその言葉を口にしない。
悟ったのだろう。
……自滅…か。
「……さて…あたしも逝くかな…」
「…は?」
「……さすがに…も……死ぬしかね…だろ」
自嘲して、手を翳してみる。
透けていた。
「…俺…を、置いて行くのか……?」
泣きそうな顔をして、あたしに言う。
「…ヒマなら……来れ、ば?」
「じゃぁ、一緒に…逝く、か?」
シキが泣いている。
「あ…そ」
あたしは自分がヴァンパイアとして生まれてきたことを呪っていた。
あたしが恋するのは必ずと言ってもいいほど、人間だった。
けど人間は、あたしらより短命。
何度、「ヴァンパイアとして生きてくれないか」と頼んだことだろうか。
けれど人間はすべて拒む。
やはり、人の生き血を啜って生きるのは少しばかり抵抗があるらしい。
あたしはそうなると必ずと言っても過言ではないほど、その男たちを殺していた。
そして、シキと出会って恋をした。
そんなやつと共に同じ時間をずっと生きられるのなら。
ヴァンパイアもわるくないと思えた。
死の恐怖はそれほどなかった。
指先から徐々に消えてなくなっていくのを見ても、死への恐怖はなかった。
「……ずっと…いっしょ、か?」
声がかすれて、ちゃんとシキが聞き取ったのかは定かではないが。
「あぁ」
という安心したような声が聞こえた。
「………………………」
眠たい。
まぶたが重い。
……後悔は、してない。
「好きだよ、京」
「…me too……現在進行形で」
「知ってる」
END