それは突然だった。


俺は5時間目の現代文の授業を受けていたはずなのに。


気がつけば俺は自分の手首に噛みついて、自分の血を啜っていた。


「………クソッ…」


ついに無意識で血を吸うようになった。


それでも俺のノドの渇きはなくならない。


俺が居るここは、ちょうど人気(ひとけ)がない西の校舎の屋外の階段だった。


太陽がいつもより眩しく感じる。


気のせいかもしんねーけど。


ザァッと風が横切る。


まるで俺をなでるように。


----恥じることじゃない


「……え…」


どこからか声が聞こえる。


----新血統に喰われたのなら


ここには俺しかいないハズなのに。


----それは自然の摂理だ


……誰…?


----ねぇ


耳の入る。


その言葉。


「……?」


さっきの声とは別の。


----あなたはヴァンパイア


…俺が、ヴァンパイア…?


----あなたの力は風


…風?


----そう、あなたは今から風系の能力を操るヴァンパイア


……今から…


ザァッと、また風が吹いた。


誰かの血のにおいを運んで。


……いつの間にこんなに鼻が利くようになったんだろう。


「…とうとう、」


俺はヴァンパイアに〝堕ちた〟のか。


「…はっ」


笑える。


俺はならないと決めていたのに。


「…それは無理だよ」


後ろから声がした。


「……なんでここにお前が」


「………………」


「…瀬来」


俺は振り返る。


「歓迎しよう、我が同士を」


瀬来は冷たい目でそう言った。


何故か、ふんわりと京の匂いがした。


歓迎なんて冗談じゃない。