〜里穂side〜




泣くだけ泣いた。

でも、やっぱり好き。



青空の下に咲いた笑顔が
やっぱり好きなんだ。



会えなくなって
4週間目の金曜日。

私はこーたくんの靴箱に
ちいさな手紙を入れた。



今日の放課後、
屋上で待ってます




こーたくんが来なければ
もう関わるのはやめる。


例え最後のつもりでも
こーたくんが来てくれたら


そのときは・・・。





虹「里穂?」


振り向くと、
息を切らした彼が
たっていた。


里「こーたくん・・・」



歩み寄ろうとして、
ためらう。

1mほど離れたところで
私は立ち止まった。



一瞬こーたくんの顔が
辛そうに見えた。

やっぱり、
迷惑だったかな・・・



里「ごめんなさい。

これで終わりにするから
聞いてほしいの。」



虹「さい・・・ご?」


泣きそうになる気持ちを
おさえこんで、口を開く。


里「屋上が好きだったの。

あおい空が見えて、

大好きな町が見えて、

風が気持ちよくって、



・・・虹太くんの笑顔が
あったから・・・、

もっともっと、
大好きな場所になったの。」



こーたくんの顔を見れない。

体温が上がっていく。


いつ言葉を遮られて
拒否させるかと思うと
涙が出そうになった。



里「こーたくんが、
好きなのっ・・・!!」


ありったけの気持ちを乗せて
風や世界の音に掻き消されないように

大きな声で叫んだ。




周りの音が遠ざかる。


日だまりにいるような
柔らかい香りに包まれて
ゆっくり目を開いた。


こーたくんが、
私を強く抱きしめていた。



虹「おれ、信じるよ?
ほんとにいいの?」


里「こーた・・・くん」




虹「里穂が、好きだ。」





はっきり聞こえた

甘い言葉は、

優しい世界に響いた。



2人の距離は
ぴったりくっついていて
こーたくんの鼓動が
私のそれと重なる。



虹「俺も、里穂がいる
この場所が、好きだ。」


顔は見えなくても、
こーたくんが微笑んでいるのがわかった。

私も涙の浮かんだ顔で
精一杯の笑みを返す。





どんな話をしよう。

どんな景色を瞳に写そう。

君と共に感じる物なら、
どんな物でも愛しく思える。



長くなった日が、

2人で迎える初夏の訪れを
教えてくれた。












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