重なった素肌



「さつ‥き。」


「俺‥ごめん‥ごめ‥ん‥うっ‥。」


血のついた手で顔を覆い、泣いたままの皐月をゆっくりと抱きしめる。


日和の目からも涙が零れて、床に落ちた。


日和の涙と溶け合った真っ赤なそれは薄くなる。


「皐月‥逃げよう‥。」



日和は皐月を更に強く抱き締める。


これが合図というように皐月もまた力強く日和を抱き締めた。


どこに向かっているのかは分からない。


ただ、誰も私達を分からない場所に行きたかった。

人気者の皐月。
目立たない私。
親友の紗由美。
皐月の親友の大地君。
当たり前の学校生活。


その全てを捨てて私達は駆け出して行く。


汗と生ぬるい血の感触、それなのに何故か重なり合った手は心地よかった。



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