「いや!皐月!!!」
「日和、愛してるよ。」
そう言いながら近付いてくる父親は私に覆い被さると、ピクリとも動かなくなった。
「え‥」
動かない父に目をやると、父の背中には深々とハサミが突き立てられていた。
その父親の後ろに居たのは皐月で、自分の手にこびりついた血を見ながら膝から崩れ落ちた。
「あ‥俺‥俺‥。」
「さ‥つき‥。」
何でだろう。
この時私に悲しいという感情は無く、ただ開放感に包まれていた。
無力な自分を分かっていた皐月は凶器に頼り、私の父親を刺した。
彼は‥
その時。
ひたすら泣いていた。
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