『ちょっ、ちょっと由梨亜……』



真っ昼間。

たくさんの人々が行き交う商店街。


私の左腕に自分の腕を絡めて隣を歩く親友・由梨亜を、当惑気味に見つめる。



「いいじゃない、その格好も似合ってるわよ」


『ありがと……って、そうじゃなくてっ……』



そんな私の心情を知ってか、知らずか。

さりげなく私の手を取り、指を絡めてくる由梨亜。



真冬だというのに、汗がすごい。

だって……。



『これやっぱマズいよ、バレるって!!』


自然、あたりをはばかるようにヒソヒソと小声になりながらも、必死に訴える。


これだけ密着していれば、唾を呑み込む音だって聞こえるだろう。


「はいはい。大丈夫、大丈夫。奏……じゃなかった。奏多(かなた)は心配性なんだから~」


真面目に取り合ってはくれない由梨亜。

そんな由梨亜はすこぶる上機嫌だ。

語尾に音符マークが付きそうなくらい。


この状況で笑ってられるなんて、心臓に毛が生えてるとしか思えない。