[愛しの姫君、奏へ。
今度のお休み、一緒にどこか出掛けようか?
君が望むなら、地の果てにだろうと連れていってあげるよ?
午前9時に君の家に向かえを遣るから。
待っててくれなかったら……分かってるよね?
君だけの永遠の王子様、遥より]


紫水が送信したメールは恐ろしかった。

蜂蜜に砂糖をぶち込んだような甘いセリフの数々もさることながら、最後はやんわりと脅している。


「最悪だ、最悪過ぎる……」

「もう、ハルちゃんってワガママだよねー☆」


由依の言葉が耳に入らないくらいには、ショックを受けた。


確かに何と言って誘うべきか迷ってはいたけれど。


こうなったら後は頼れる奴は、清龍しかいない。

思えば、この3人の中では一番まともだ。



「清龍、お前なら何て打つ?」


俺様の問い掛けに清龍は静かに右手を差し出した。

その手にケータイと希望を託す。


数十秒後、清龍は黙って俺様の前にケータイを掲げた。



[日曜、午前9時。駅前、時計台にて待つ]


「なっ……は、果たし状かよっ!!」

「……あ」


叫んだと同時に清龍が小さく声を洩らす。

嫌な予感と共に見れば画面にはまたもや、“送信完了”の文字。

どうやら、驚いた表紙に清龍の指が送信ボタンに当たってしまったらしい。


「お前っ……また……」


一人で全員につっこむのは辛い。

私的な理由以外にも奏、もとい光の帰還を待ち望む俺様だった。



場所は変わって。

俺様の名前で立て続けに届いたメールに奏が頭を悩ませていたのは言うまでもない。



おしまい☆