「優勝おめでとう」


「ふざけんなっ!めでたいのはお前の頭ん中だろ!?」


非常に晴れやかな笑顔で祝福の言葉を述べる紫水に、遥は掴み掛からんばかりの勢いで罵声を浴びせた。


くっきりとした二重の目には憎悪の感情がありありと浮かんでいる。

礼を欠いたように聞こえる発言だったが、“せっかく祝ってくれたのに、その態度は何だ!?”などと彼に問う人間は一人もいない。



「そうだね、この頭には皆を幸せにするための知識が詰まっているから君の言う通りめでたいね」


全く意に介さないのが、紫水という人だから。


遥ちょっと上手いこと言うなぁなんて思ったのはもちろん内緒だ。



「嘘つけ、腹ん中真っ黒な癖して!」


「嫌だなあ、そんな悪い人間じゃないよ」


番組の収録が終わって早々、着替えもせずにこの調子。



「ふぅ~。今日もお茶とお菓子が美味しいねぇ☆」


「光、お茶……?」


ここはここでマイペースだ。



『あ……、ありがとう』


清龍が差し出してくれたお茶をうっかり受け取ってしまった。


人が言い争っている傍らで暢気にお茶をしていられるほど私の神経は図太くない。

図太くないけど、こうも落ち着いてる二人を見ていると調子が狂ってしまう。


そんな我が身の不甲斐なさも、この控え室に漂うピリピリしてるのにヘラヘラでほのぼのでのんびりなおかしな空気もいつも通りといえばいつも通り。


いつもと違うのは1つだけ。