彼女は分かっていない。

僕が仕事中に前髪を上げる意味を。


見てくれだとか、そんな表面的なものを気にしているわけじゃない。


オンとオフの切り替え。

謂わばそれは、僕という人間の生き方そのもの。


腹黒いだとか、表裏があるだとか人は言うけれど、紳士的な僕も、意地悪な僕も僕であることにかわりない。

全てを見せていないだけ。


仕事で前髪を下ろせということは、僕の生き方そのものを否定するに等しい。



どうでもいい人間にはどうでも良く優しく接する。

親しみを覚えた人間には最上級のもてなしを。

そして、邪魔・嫌悪の対象だと認識した人物は……。



パシャッ。


「はい、オッケーです!」


今のカットは今日一番の“笑顔”だったと思う。



ふふっ、地獄の底まで追い落とさなくちゃね?



おしまい☆