――紫水視点



「すみません、もう少し顎を下げてもらえますか?」


狭いスタジオ、眩しい照明の光の中でカメラマンにお願いという名の指示を出され、内心苦笑気味に少し俯く。


僕が人の指示に素直に従うなんて変かな?


でも、餅は餅屋。

専門家の言うことに従った方が良い作品になると思うよ?



「このカット、もう少し左から照明を当ててもらえますか?」


出来上がったものに納得がいかなかった時は、きちんと撮り直してもらうけどね。



それにしても。

今日の写真の中の僕は威圧的な目をしている。


仕事とプライベート、完全に分けているつもりでいたけれど、思考が態度に現れてしまっていたかもしれないな。


大方、顎を下げろというのはこれを遠回しに指摘しての事だろう。



ライブツアーが終わってからこのところ、単独での仕事が増えていた。

今もこうしてスチール撮りが行われているわけだけれど。


つまらない。

つまらなかった。


自ら売り込んでこの世界に飛び込んでからというもの、芸能界もなかなかに刺激的で面白いと思っていたのに。


彼ら4人、そして奏と出会ったおかげでこんなに味気無く感じる日が来ようとは。


良い意味で計算外だった。