雨が降りだしたのは何時頃だっただろうか。 天気予報では晴れと言っていたものの雨は時間が経つにつれて激しさを増していた。 ほとんどの人は傘を持っているはずもなく駅の改札は学生や仕事終わりのサラリーマンが空を見上げ小降りになるのを待っている姿が目立つ。 「せっかく仕事早く終わったのに付いてないわ……」 空を見上げながら河西さつきは大きく溜め息を吐いた。 名古屋から東京に仕事の都合で住む事になり東京の人混みにもさすがに慣れてきている。 アパレルメーカーである《Love》と言うブランドで河西さつきはデザイナーとして働いてもう5年を過ぎたであろうか。 専門学校を卒業してずっと夢に見ていたデザイナーとして今働いている。 親元を離れ住んで居た名古屋から念願の東京に移り住んで一人暮らしも大分慣れてきた。 ワンルームマンションでさすがに部屋も狭く感じ始めている。 「もしかしてさつき先輩じゃないですか?」 さつきの背後から男が声を掛けた。 「はい、そうですけど ……?」 「分からないとかないですよね? 僕ですよ北瀬拓磨ですよ!当分雨止みそうもないんでタクシーで帰ろうかと……もし時間あったら一緒に飯でもどうですか?」