あれから何時間経ったのかな?

お兄さんは、帰って来てくれるかな?

暗いよ…独りになっちゃうのは、嫌だよ。

お兄さんに居て欲しい。

お兄さんが好き。

お兄さんだけ…お兄さんしか居ないよ…。

闇は、広がって行くばかりだ。




俺は、お兄さんが帰るのを待った。
いつもお兄さん帰って来る7時を待った。

3分、5分、丁度6分過ぎて、やっと玄関から音がした。

「お兄さん…」

俺がベッドから降りた時だ。

「あ…れ?」

俺の脚には、力が入らなかった。

「ど、しよ…?」

ペタンとペンギン座りになりながら呟いた。

「お兄さん…」

俺は、もう一度脚に力を入れた。

すると少しずつ立ち上がれた。

「やった…」

そう思った瞬間ズルズルとまた座り込んでしまった。

「お兄ぃさん…」

萎み下を向くと、ため息と同時に扉が開く音がした。

「何…してんだ?」

「お兄さん…立て無いの。」

俺は、上目にお兄さんを見上げると目を潤ませた。

「何でまた…湊汰お前朝飯と昼飯どうした?」

「あ…」

俺は、思い出して言うと同時にお腹がぐぅーっと鳴ったんだ。




「お腹一杯ありがとお兄さん…。」

俺は、あの後抱っこされ、台所でお兄さんが作った、焼きそばを食べた。

「お前な…嫌、俺が悪かった。」

お兄さんは、ため息をつき謝った。

「何で?俺が悪いのに…」

俺は、お兄さんに手を伸ばした。

「お兄さん?」

「…聞く気は、あるか?」

俺は、お兄さんが何を言ったのか分からず聞き返した。

「俺の10年前の話聞く気は、あるか?」

「え…」

お兄さんの言っていることが理解出来ない。

「俺は、10年前男と付き合っていた。聞く気は、あるか?」

俺は、目を見開いた。

「聞きたい。」

俺の口は、俺の当惑する意識を無視し言葉を紡ぐ。



「じゃあ話そう…あの頃のことを―」