あたしは上にいる滝川くんの体を思いきり押して、ソファからどかした。
だけど、あたしの力はあまり通用しなかったのか、滝川くんは床にしりもちをつくことなく、少しよろめきながら立っただけだった。
そこであたしはソファから立ち上がり、目の前に立つ滝川くんの体をポカポカとたたいた。
「おい!いてっ!やめろ!」
滝川くんにしてみれば、“たかがそれだけ”で終わるかもしれないけど……。
あたしにとってみれば、すごく、すごく大切なもの。
だってキスって、ふつうは好きな人とするものでしょ?
それを、好きでもない人に無理やり奪われて……。
あげく『たかが』や『それだけ』のひと言で済まされるなんて、くやしい!
「最低……っ」
涙がポロポロとあふれて、スカートにシミを作っていく。
もう、イヤだ……。
こんな人の前でなくなんて。


