街中に、ぽつんと佇む一つの神社があった。

本殿や参道を囲むように鎮守の森が広がり、然程大きな社ではないものの、その荘厳さは神社が持つ本来のそれを失うこともなく、何とも言えない趣がある。


そんな社の前に、悠然と立つ一人の少年の姿があった。
歳は十七、八くらいだろうか。
色素の薄い肩に掛かった髪と、琥珀色の瞳が印象的な少年である。比較的細身な体格ではあるが決して華奢ではなく、周りに人がいたならば多くが振り返るような容姿だった。
だが、生憎今は周囲に人の気配はどこにもなかった。


少年の脇を風が通り抜けていく。その風の心地良さを全身で感じながら、彼は小さく溜息をついた。
この土地に深く結び付いた彼は、来訪者の存在を敏感に感じ取っていた。
悪意のような、悪い感じはしなかった。だから、長い時の中のとても些細な変化だと、毎度のことだと、いつものように彼は割り切って顔を上げる。


「……また、春が来たんだ…」


彼の小さな呟きは、風の音に溶けて消えた。