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『ねぇ?何で普通に寝てるのよ…?』


学校から帰ると当たり前のようにあたしのベットにワンコが転がっていた。


『ねぇ?その挨拶そろそろ飽きないの?』


ワンコは完全にくつろぎモード、手にした少女漫画をパタンと閉じて入り口に立つあたしににっこり言う。


『挨拶じゃないもんっ!』


中学2年、6月。空はシトシト湿った雫を落とし続けている。


『英語辞書借りに来たら眠くなっちゃってさぁ…』


寝転がったまま呑気に大あくびの姿はほんとに仔犬みたいで、なんか無償にムカッとくる。


地毛だって元から明るいのに手を加えた事によりフワフワの髪は日に日に鮮やかさを増し、そんなミルクティとハチミツ色の中間みたいな色の髪の毛は軽く寝癖、それが窓からの風で揺れていた。


『あのねぇ、辞書なんて恭次がいつか持ってったきり返してもらってないけど…』


目の前の少年は…思いっきり嫌な顔して言ったあたしの言葉と梅雨の湿り気とは、全く真逆の爽やかさを纏っていた…。