『昔っから毎日あたし家に来て飽きないね』

『だって家にいてもつまんないし、ここには波琉が居るし』

『そっか進ちゃんいないから寂しいんだ』

『別に。壱なんて関係ないけど』

『なにそれ?ひどい言い方』

『南深うるさい』


恭次には7つ離れた進壱(シンイチ)こと、進ちゃんというお兄ちゃんが居る。


根っからの放浪癖の持ち主であり、高校を出ると同時に家を出て、今現在は石垣島を拠点とし色んな所に旅をしている。


あっけらかんとして独特の雰囲気を持つ不思議な進ちゃんは、あたしのにとって憧れる優しいお兄ちゃん。

恭次みたいに嫌なことも言わないもん。


『そもそもここも俺んちだし』


良く聞く恭次定義。

お決まりの言葉…


『でもさぁ…中学生って言ったら独りの時間とか家族に秘密事とか…普通そう言うお年頃でしょ?』

『秘密ならいっぱいあるよ♪あ!!なぁ?波琉♪』


とまたワケわからないことを言ってあたしの2歳の弟、波琉(ハル)に同意を求める。


『ねー♪』


絶対何もわかってない波琉はご機嫌でお返事。


このチビッコは、あたしが10歳の時にこの世に生誕。



もうすぐ3歳になる可愛い可愛いあたしの弟。

そして恭次は波琉を溺愛している。

それはもぅ、親を超えているというか、なんというか。

波琉ももちろん、恭次にとっても懐いていて、そんな波琉は素直で微笑ましいけど、将来どうか恭次みたいに成長しない事をひたすら祈る日々…

危険大!!


『波琉、バカ恭次の話しは聞かなくていいからね』


『ねー♪』


波琉ちゃん…絶対わかってないね…?

まぁいっか…(笑)



『もー恭次は意味わからないからね』


あたしは今度は恭次に素っ気なく言った。


どうしても、可愛く無いことしか言えない…


小さな頃みたく、思ったことを言える可愛さなんて…

いつしか、消えてちゃった。