小人は唯でさえ大きな口を輪郭から飛び出すのではないかというぐらいニンマリと曲げ、
「ネバーランドの使いさ(笑)」
と答えた。
その時の私にはそのユーモアが理解できず、
「真面目に答えてよ!?」
と、怒鳴ってしまった。
小人は何故怒鳴られるのか分からないと言った口調で、
「あなたはバカなの?」
と言った。
私は何故バカと言われたか冷静に考える暇など持ち合わせておらず、顔を真っ赤にして怒鳴り散らそうとすると、小人の方が事態を悟ったらしく、わざとらしく、丁寧に謝った。
「これは大変ご無礼を。ゆるしてくださいまし。」
わざとらしい謝罪に多少ムカつきながらも了承した。
「あなた様を怒らせる気はなかったんだよ。僕は本当にネバーランドから来たんだ。でも、ネバーランドといっても、人間たちが想像している夢の世界とはわけが違うんだ。つまりは偽善、これしか存在しないんだよ。ネバーランドに住んでいる人間たちは自分のことしか考えていないんだ。例えば、ネバーランドの人は良く人助けをする。自分の身を省みないでなんてことは絶対にしないんだけどね。何故人助けをするのかというと簡単さ。その善によって自分の魂の安寧を求めているのさ。人から好かれたい、それしか考えないのさ。否、好かれないでもいい人もいるんだけど。」
私はネバーランドというのは、皆が楽しく平和に暮らしているという固定概念を軽く覆す発言を目の当たりにして、頭がこんがらがってきた。とりあえず、辛うじて質問できたのは、「あなたがネバーランドの住民という証拠はあるの?」だけだった。
小人は待ってましたとばかりに口を大きく空け、言葉を発した。
「じゃあ、この世界の人間ができないことをしたら認めてくれる?」
「もちろんよ。」
小人はおもむろにくちから自分の体積の何倍もの杖を取り出した。
「じゃあ、見ててね。」
何故気づかなかったのか、その時点で既にあり得ないことがおきているのに。私は目を凝らして小人を見つめた。
小人は杖を一振りすると、たちまち先ほどまで父親が独占していたテレビが浮かび上がった。
「まぁ、なんてこと。」
私はあいたくちがふさがらない思いだった。だが、それは小人を何か違う次元の生物だと理解させたことに相違なかった。
「分かったわ、認めましょう。」
私は頭の中が混乱している中、一本の思考回路からその言葉を繋いだ。
「でも、まだ分からないことがあるわ。何故、利己主義の貴方がここにきたの?」
私は我ながら良い質問をしたと自賛した。だが、小人は困った様子もなく、
「あなたのためなんですよ?」
と平然と放った。