薫とのキスは私にとって、何よりのご褒美だった。


「姫乃」

「ん?」



「姫乃、わかってないだろ。」

「え?」


わかっていない?
何を!?


「クラスの皆が俺が前に執事をしていた人が誰か、わかってること。」

「え・・・!?」


「さっきの話で、完璧に姫乃がお嬢様だってばれたよ。」

「なんで!」


「だって俺ら」


付き合ってたじゃん―――



あの優しい笑顔で言う薫。

それは、嬉しいのか?


「で、話の初めに俺、そのお嬢様のこと好きって言ったし?ばれるに決まってるじゃん。」



そういうことか。

じゃぁ、あれは!!




『それ、そのお嬢様に言えよ?』


『普通は私たちに言う前にお嬢様に言うべきことでしょ~?』


皆、知ってのことで・・・!



「顔真っ赤ですけど?」

「う、うるさい!」



「でさ、ごめん。俺時間ないんだ。」


「え?」


「言ったろ。留学。」


そうだった。

薫には留学があったのだ。