そして、この日はあっという間に終わっていったのだ。


そして、放課後。




「薫!」

「・・・姫乃っ!?」



私は薫に抱きついた―――


「ちょ、っと待て!?」



そこはまだ学園の敷地内。

人はさほどいなかった。



「いったん離れろっ!」


「ずっと・・・」

「え?」



「ずっと、こうしたかったんだ。」



そう、ずっと、こうやって薫に抱きつきたかったんだ。

だから、今はこうさせてほしい。



でも、薫は「はぁ」と言って私を自分の体から離した。


「ちょっと来い」



そう言って私の手を握って歩き出す薫。



そして、そこはあの場所。



「姫乃な、あんなところで恥ずかしいだろ!」

「ごめん、なさい・・・」


「ったく」


薫を怒らせてしまった。

ただ、近づきたかっただけなのに・・・。



トサッ―――


その時、視界が暗くなった。


それは、薫が私を抱き寄せてくれたから。


「か、おる?」


「こうしたかったのは俺もだから」



そっと抱きしめてくれる薫。


その腕の温かさや優しさ、薫の声はあの頃と何も変わっていなかった。


「かおるっ」

「姫乃っ」



―――ずっと、ずっと、こうやって抱きしめたかった―――




そして、薫が私から少し離れた。

そして、私の顔を覗く。


「すげー、嬉しいんだけど?こうやってまた姫乃に触れられて。」

「薫・・・。私も、だよ?」



「なぁ?」


「なに?」




―――キスしてもいいか?


その言葉を聞くのはいつぶりだろうか。



どうして、そんなことを聞くのだ?

薫、答えはわかっているのだろ?


「・・・はい。」



そして、薫は私にそっと口づけをした。