キーンコーンカーン―――


薫がそこまで話した時、チャイムが鳴った。



「薫さん、時間が来てしまったようなんだけど・・・」



「最後に一言いいですか?」



「えぇ。じゃぁ一言。」




薫の言ったその一言は、きっと私に向けられた一言。







―――行ってきます





教室が少しざわつく。


「それ、そのお嬢様に言えよ?」

「普通は私たちに言う前にお嬢様に言うべきことでしょ~?」

「まぁ、長い話だったけどさ、なんか、ジンときた。頑張ってこいよ、ひつじさんっ」

「羊じゃないわよ!執事よ!」

「あははははっ」



皆が楽しそうに笑っている中で私はジッと薫を見つめていた。


すると、薫も私の方を向いてくれた。

そして、今度は口だけの動きで「いってきます」と言ってくれた。


それは、私に向けられた言葉。



今までの長い月日でできた私と薫の間にできた溝がウソのように、私たちはお互い笑いあった。



私が知らなかった事実。

それを今日知った。



でも、きっと本当は言ってはいけなかったこと。

それでも薫は教えてくれた。


どうして?



あぁ、そうか。


薫は、優しいから。



なぁ?そうなのだろ?薫。