背に吹き抜けるは君の風


「おい、今、なんか悪口言っただろ。」

長い黒髪を耳にかけながら、ジロッとこっちを睨む。

(おお、怖っ!)

「もうすぐ入学式だねーカッコイイ子入ってくるかなぁ」

「その前に学年末テストだけどね…」

あたしはがっくり肩を落とす。

新入生よりテストのほうが、何倍も気がかりだ。

「愛、お前、安藤のことが好きなんじゃないの?」

「悠人君はトクベツ~」


ーーー

「ミナ、行こ」

「わ、ちょっと待って紗江。文鎮持ってくる」

「早くしたまえよー」

「うん」

その日の放課後。

今日も気が遠くなるような授業が終わり、やっと部活だ。

もうすっかり教室はスッカラカンで誰もいない。

あたしは、文鎮を取りに再び教室へ向かった。

書道部に入ってから約一年。

昔から字を書くのだけは得意だったから、友人の紗江と一緒に入部した。

県の高校書店とか文化祭に出品する作品を書くから最近は結構大変だ。

「あれ?ないぞー」

それにしても文鎮が見当たらない。

ガサガサ机の中をあさるけれど見つからない。

それにしびれを切らしたのか、紗江も一緒になって探してくれた。