悠人は、スポーツマンらしく、さっぱりしているから、細かいことにはこだわらない。
あたし一人で意識してバカみたいだ。
細い銀色の雨に、街が淡く煙っている。
道端で揺れる、虹色の紫陽花が、ビー玉みたいな、雨の粒をはじている。
6月の雨は、なんだか優しい音楽みたいだ。
「そういや、橋本とか高科は?」
悠人が突然、口を開いた。
「今日あたし日直だったんだ。だから、先帰ってしまったよ……」
「そっか。お、着いた。美南サンキュ」
悠人はコンビニに到着するなり、さっさとあたしに傘を渡して、去っていった。
振り向きもしない。
(そっけねぇ……!)
あたしはひとり、名残惜しくて、コンビニの中に消えていく悠人の背中を、ずっと見ていた。

