背に吹き抜けるは君の風


「せ、説教されてます……」

見ての通りです。

「洸太、お前もついでにこいつに喝をいれてやってくれ」

「い、いいっす遠慮しときます!さよなら洸太君。引きとめてすいませんでした」

愛の彼氏はそんなあたしの思いとは裏腹にヘッドホンを外しながら書道室にとぼとぼ入ってきた。

上履きをちゃんところえて畳の部屋にあがって。

他の部員たちのテンションが明らかに高くなっていた。

もちろん主に女子。

「俺、一回この部屋に入ってみたかったんだよね」

「入部するかあ?洸太」

「や、それは……。俺、字とか究極に下手だし……」

先生はあたしをやっと解放してくれて、そのまま、物珍しげに部室内を見渡す愛の彼氏の元に近づいていった。

「美南、字、上手いんだね」

愛の彼氏が壁にかかってるあたしの字を見ながらつぶやいた。


それでちょっと鼻高々になっていると、先生がすぐに口出ししてきた。

「あー?ばっか洸太よく見ろ。俺の足元にも及んでねぇよ」

(……このやろう。)