背に吹き抜けるは君の風


「綾代なんてな、数学が全くできないからせめて唯一得意な字だけでも上手く書こうと頑張ってるんだぞ」

「ええ!なんでそこであたしを話題に出すんすかっ」

「どんなに綺麗に字を書いたって点数上がんないの分かってるてるくせに…」

突然先生に肩を叩かれたあたしは、みんなの笑いの的にされた。

なんで、あたしはいつもいつもこう、バカにされてばっかりなんだ。

それもこれも全部悠人のせいだ。

だって悠人の近くの席になってから、こういうことが増えた。

あたしは奥歯を噛み締めて斜め前の悠人をにらんだ。

だけど、いつも助けてもらってる。

(ま、いっか…。)

そんなあたしの気持ちを知ることもなく悠人は周りのやつらと笑ってる。

そのとき、目を覚まさせるかのようにチャイムが鳴った。

みんなが一斉に“終わったー”と喜ぶ中、先生はさっさとあいさつを済まして教室を出て行ってしまった。