背に吹き抜けるは君の風


「だれこいつ?」

あたしが聞くと、その子はムッとしたように目を光らせた。

「安藤 洸太(あんどうこうた)。1年B組、剣道部。安藤 悠人の弟だ。」

そんな顔をすると、目鼻立ちが整っていてきれいなだけに、迫力があってこわかった。

「悪かったな。こないだ驚かせて!」

ギリッと睨みつけられて、あたしは背筋がゾクッとした。

「あの、いや、あなたとあたしは初対面ですよね?」

「忘れてんのか!俺が窓割って入って来ただろ!」

(はて……窓、窓、窓?)

沈黙すること20秒。

「ああー!あん時の!」

ほとんど叫ぶように言った。

失礼だけど、思わず驚きのあまり、悠人の弟を指差してしまった。

「別に迷惑かけてないよ?」

瞬間、悠人の弟は、それまで目の中に浮かべていた火のようないらだちと怒りを、ふっと消したのだった。

「サンキュ」

微笑みを浮かべたその目は、いままでで見た目の中で最高、ドキンドキンするくらい美しかった。

一瞬しか見れなかったけど、間違いない。

あの綺麗なやつだ。

(てか、なにがサンキュなの?)