「先生、なんですかこの暗号は…」
「お前、今度の学年末テスト大丈夫か…?」
「や、やばいっす…」
まだ高1だから受験には関係ない、と余裕ぶっこいてたのがいけなかった。
今日も机の上におかれた一枚のプリントとにらめっこ。
横から容赦なしに降り注いでくる日差しが、さらにあたしの頭を真っ白にさせていく。
そんな高校1年生の冬、あたしは気になる人がいた。
それは斜め前の席の天才君ーーー安藤 悠人(あんどうゆうと)。
「お、安藤はもうできてんのか。早いなあ」
「まあまあ、先生。そんなバカなところが、美南(みなみ)のカワイイところなんだからさ。」
そう言いながら悠人は、床に錯乱した、あたしの教科書やらえんぴつやらを拾ってくれた。
「いつもいつもありがとうございます…」
あたしは感謝の気持ちで胸がいっぱいになりつつ、机をおこした。
悠人は髪を染めていないから真っ黒だけど、さらさらで癖がない。
すごい優しくて、頭が良くて、明るくて、イケメンで。みんなの人気者。
そのうえ一年生でただ一人の、サッカー部のレギュラー。
(どんだけだよ…)
とにかく、何をしなくても目立つ人。
こんな人を気にならないって人は、まず、いないだろう。