背に吹き抜けるは君の風


圭祐の言う通り、生徒の半数以上が机にうつ伏せになって寝ていた。

音楽担当の先生は、酔いしれるように指を動かしている。

『おじいちゃん先生』って愛称があるのも、納得だ。

「アホだよなあ。いくらベートーヴェンが好きだからって、授業中何回聴かせる気だよ」

(ああ、これ、ベートーヴェンの曲だったんだ。)

『へぇー』と小さく声を漏らした瞬間、鈴木先生が突然パッと目を開け、ツカツカと黒板のほうへ向かって行った。

あたし達は一瞬、怒られるのかと思ってビクッとしたけれど、どうやらそうではないみたいだ。

「おい、寝てる奴。起きろー。教科書開けー」

全く迫力のない声と表情で鈴木先生はみんなに呼びかけた。

白髪頭に四角い眼鏡の鈴木先生は、いつもおっとりしている。

そんな鈴木先生の声に、生徒達はだるそうに起き上がると、教科書をパラパラめくりだした。

あたしは教科書を開きながら、窓の外を眺めていた。

校庭は昨日の雨のせいで少しぬかっている。

桜はもう散っていた。