「ミナは、好きな人いないの?」

「っ」

なぜかその時、胸がうずいた。

(いくらなんでも、悠人が好きとか言えないしっ)

突然の質問に、あたしはただただ動揺するばかりだった。

「おー?その反応は図星かー?」

「いやいやいや、いないっす!」

「否定するところがますますあやしいぞ、テメェ」

紗江は、ヒジであたしの腕をつつき、おちょくるようにニヤッと笑った。

あたしは笑いながらも、さっきの変な感覚を必死に押し殺していた。

あの、くすぐったいような、切ないような、感覚を。

その時、いきなり突風が巻き起こり、スカートや髪が乱れ、空一面に桜の花びらが舞った。

空が一瞬、薄い桃色に染まる。

ひらひらと桜の花びらが舞い降り、あたしの手のひらに一枚落ちた。

その桜の花びらを手の中に閉じ込めようとしたけれど、再び風が吹き、それはそれは空へと飛んでいってしまった。

ぎゅっと握った手を開いてみる。

ーーーそこには何もなかった。