「おと、弟!?」
悠人は掃除用具から、ホウキとちりとりを取り出す。
「そ。今度の春から、この高校に入るんだけど、その下見のために窓から入ってきたんだって。意味わかんないよね?」
キラキラ光るガラスをホウキで集めて、ちりとりにおさめていく。
その横顔をずっと見ていたかった。
「だから、俺が責任とらされて、掃除してるってわけですよ。」
「それはまた、やんちゃな弟さんで……」
悠人は、「だろ?」とこっちを向いてふわっと笑う。
夕日のせいか、いつも以上にその笑顔が眩しかった。
弟とはまた違う笑い方。
(いい顔で笑いますねー……)
「あっ、でもですね、この墨は弟さんのせいではないんすよ。」
「そうなの?」
「関係ないって言ったら嘘になるけど、あんま関係ないっす……」
「まあでも一緒に片付けちゃおう!」
夕暮れの教室で見る悠人は、なんか特別だ。
その“特別さ”を心に刻みつけておこう。
悠人の優しさとともに。
「美南、それより早く手、洗ってくれば?」
「げっ!」