ラプソディ・イン・×××

薄暗いバーの幕が上がる。




期待の帯びた視線が集中する。



片隅に立ち上る葉巻の煙。


アルコールの匂い。


氷のぶつかる音。



一つとして欠けては味気ない

酔いしれる完璧なハーモニー。




ライトに艶めく

ゴールドのサックス。



揺らめいて煌めいて


目が眩んだ。





大きな拍手で幕は閉じた。







「おつかれー」


「あー、のど渇いた」


会心の笑顔の

ブルームーンのメンツが

次々控室に入っていく。



「ウォッカ、ありがとうね」


控室に入る前の狭い廊下で

こっそりスミレに

声をかけられた。


「ここ、ジャズバーの老舗でしょ。

ここで認められて

第一歩って思ってたから。

キャンセルしたら

いつ次のチャンスがあるか

わかんないじゃない?


だからどうしても

出演のチャンスを

逃したくなかったんだ。

ほんとにありがとう」


スミレは、

汗で濡れた前髪を

かきわけながら微笑んで、

ガバッと頭を下げた。


奥二重の目がなくなるくらいの

いい笑顔だ。