ラプソディ・イン・×××

「悪いけど、

他の奴らには黙っててくれよな。

…個人的な事情だし。

気使われたくないしさ。


一回きりだけど、

オレだってブルームーンとして

いいライブにしたいんだ」


「…うん」



「最高の夜にしようぜ」


そう言って

オレは拳を突き出した。



「うん」


スミレは

やっと笑顔を取り戻して、

オレの拳に

コツンと拳を合わせた。






ジャズバー“south”は、

親父の秘密の隠れ家だった。



若い頃、

テナーサックス吹きだった親父は

このステージに立って

演奏したこともあったらしい。



昔、本気で音楽を志してた時期も

あったみたいだけど、

結局、志し半ばで

今の会社を継ぐことになった。



音楽やめてからは、

客席(ホール)じゃなくて、

カウンターの片隅で

一人酒と葉巻片手に

ジャズの生演奏を楽しむのが

多忙な親父の唯一の

息抜きだったようだ。



決まって飲むのは、

ウイスキーのジンジャー割り。