ジンはしばらく考えてこんでから

口を開いた。


「…難しいな。

親父さんだけやなく、

椎南さん自身の気持ちも

考えなあかんしなぁ」



会うことを

禁じられているとはいえ、

実の父親の病状を知る権利は、

佐野椎南にはあるはず。


ただ、佐野椎南本人が

親父のことを

どう思ってるのかは知らない。




「つーか、そこが

一番の問題なんだよなぁ〜」


オレは天井を仰いで

ため息をついた。



認知すらしてない実の父親に、

はたして会いたいと思うだろうか。




佐野椎南には、

育ての父親がいる。


育ての父親は、

それは愛情たっぷりに

佐野椎南を育てた。



どうするのが正しいのか

わからない。


「オレだってさ、

親父に育ててもらった

わけじゃないけど。

ずーっと別居してたから」



だから、

すっげー恩や情が

あるってわけでもないけど。



死を目前にした親父に

何かしてやれるのは、

もはやオレしかいないんだ。