「知那」
「っ、はい」
彼に呼ばれた名前。一瞬の息苦しさを感じたけど、すぐに返事を返した。
「どこにいってた?」
「友達の…家に…」
「…本当?」
「はい」
咄嗟の嘘には慣れた。
部屋にはワインの空き瓶と、タバコと灰で黒ずんだ灰皿。臭いで蒸せ返りそうになる。
「…知那、お風呂、入ってきて。真弥も智美はそろそろ帰れ」
「えー?久々に姫と会ったんだ。もう少しいいだろー」
「そうよ。姫ちゃんと話したーい」
出きるなら、さっさとお風呂に入って、部屋に引きこもりたい。
「ダメ。酔っぱらいと、タバコの臭いが知那に移る。近づくな」
「別に襲ったりはしねぇよ」
「ばか。当たり前。知那、早く入っておいで」
「はい」
二人にお辞儀をして、脱衣所に向かった。二人は二人で、姫ーと呼んでる。
