居場所。

「智美、10分くらいでつくから、門にいてだって。あとこれ、渡しといて」

「…はい」



1000円を受け取って、教室を出た。



「でね?咲が、あ、ちーっ。早かったね。もう終わり?あれ?あの人は?」



私に気づいた茜が、話を降ってきた。



「うーん。先に帰ってろって、追い出されちゃった…」

「じゃあ、一緒に帰らないの?」

「迎えがくるから…」

「そっか。じゃあ、またね」

「うん。またね。おばさんも、また」

「気を付けてね」

「はい」



見送られながら、その場を去った。

いいなぁ、家族か…。やっぱり、まだ辛い…。泣かない。弱音も吐かない。大丈夫。私は強い。


門へ向かいながらそんなことを、考えていた。



プップー!プップー!「姫ちゃーん!」



声につられて前を見ると、既に赤の可愛らしい車の中から、私に向かって手を降ってる、智美さんがいた。


駆け寄って、おずおずと、車に入った。



「すみません。わざわざ。これ、渡してって、頼まれたお金です」

「いえいえ。こちらこそ~。あたし今月、ピンチだから、夕飯代なんだ~」


ああ、成る程。報酬ってことか。