「知那さんは優秀ですし、人柄もいいので、人気もあります。特に問題はないですよ。藍沢は就職、だったか?」
「はい」
「え?」
何、驚いてるんだろう?当たり前。進学なんか出来ない。お金かかるし。
「ご家庭で、そういった話は、してませんか?」
「…はい」
「そうですか。…ちー、話しにくいことでも、ちゃんと話さなきゃダメだろ」
「はい」
ああ。だから、嫌だ。三者懇談は…。
「ご家庭でもう一度、話し合ってみてください。この成績でしたら、指定校推薦だって、奨学金も出ます」
「…はい」
希望はかえない。就職する。お金を溜めなきゃいけないから。だから話も要らない。ああ、もう。早く終わればいいのに…。
「話は、それくらいですが、何かありますか?」
「…知那は先に、帰っててくれないか?智美を呼ぶから、一緒に帰っておいて。ちゃんと家にいてね」
「えっ?」
「俺は、先生に話があるから。いいですか?先生」
「ええ」
先生は一瞬、驚いた表情をして頷いた。彼は携帯を取り出して、耳にあてた。
誰かに、電話…?
「ああ。智美?今から知那、迎えに来れない?そう。家から出ないように見てて。いいよ。じゃあよろしく」
どうやら、智美さんだったらしい。
って、え?何?監視?こわ…。
